IQ2のサボテンでも分かる「エモい」の意味や使い方そして歴史

音楽

ここ数年で何故か急に流行りだした「エモい」という表現。

音楽アーティストにとっては昔から馴染みのある表現ですが、最近の「エモい」の使われ方は至極曖昧です。

そんな意味も分からず「エモい」を使っている不埒な輩に向けて、

お前ら「エモ」を聴いたことあんのか?

と、圧をかけて言いたくなるような気持ちをグッとこらえて、今回は「エモい」のバックグラウンドとなる音楽と使い方について触れていきます。

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そもそも「エモ」の意味とは?

「エモ」はハードコアパンクから派生した音楽のジャンルです。きちんと発音するのであれば「イーモウ」となりますが、これではカタカナ的にダサいので日本では「エモ」と呼ぶようになっています。

語源は「エモーショナル(感情的)」で、根源ジャンルがハードコアパンクとなることから、エモーショナルハードコアと呼ばれたりもします。

音楽ジャンルとしては「エモ」、形容詞としては「エモーショナル」で棲み分けておくと、混在しにくいでしょう。

音楽ジャンルである「エモ」の歴史

歴史とか一端な言葉を使っていますが、「エモ」の歴史はそこまで長くもなければ濃くもないので、さらっと読み流して下さい。

1980年代 「エモコア」の誕生と消失

1980年代にワシントンD.C.周辺で活動していたMinor ThreatやFugaziといった新しいハードコアパンクサウンドを、とある雑誌が「エモコア」と呼称したことから「エモ」の歴史が始まります。

これに対し、両バンドのフロントマンを務めるIan MacKayeは「エモコアなんかクソだ」と一蹴。良かれと思って命名したジャンル「エモコア」の歴史は早くも幕を閉じてしまうのでした。

1990年代 音楽ジャンルとしての「エモ」確立

1990年代に突入すると、そんな1980年代のワシントンD.C.ハードコアパンクサウンドに影響を受けたバンドが次々と「エモ」ジャンルを確立していきます。

「エモ」とカテゴライズされることを毛嫌いするバンドが多い中、Sunny Day Real Estateは初めて「エモ」というジャンルで大成したバンドとされており、後の音楽シーンにも大きく影響を与えました。

同時にNirvanaやPearl Jamといったバンドを代表とする「グランジ」「オルタナティブ」と呼ばれる音楽ジャンルも若者を中心にムーブメントを起こします。こちらはハードコアパンクよりも、メタルからの影響が強い音楽ジャンルとして定義されています。

2000年代 「エモ」の流行そして派生ジャンル「スクリーモ」の誕生

2000年代に突入すると、インターネットの普及によってそれまで水面下で活動していた「エモ」がメインストリームへと浮上していきます。

本人達は否定しつつも音楽性やファッション性から一部ファンより「エモ」にカテゴライズされるMy Chemical RomanceやFall Out Boyなど、「エモ」はインディーロックシーンからメジャーにまで浸透しました。

同時に「スクリーモ」と呼ばれる「エモ」の派生ジャンルが台頭し始めます。ゲーム『キングダム ハーツIII』で宇多田ヒカルと共にオープニング曲を担当したSkrillexは、From First to Lastというスクリーモバンドでフロントマンを努め、パンクキッズやエモキッズに大きな刺激を与えました。

「エモ」をより重く激しく奏でる「スクリーモ」は後の音楽シーンにも大きな影響を与え、日本発のバンドではCrossfaithやFear, and Loathing in Las Vegasといった「メタルコア」や「ポストハードコア」と呼ばれる音楽ジャンルの土台となっています。

2010年代 ロックの衰退と「エモトラップ」の流行

2000年代には音楽性、ファッション性と共に多大な影響を与えた「エモ」ですが、2010年代に突入するとロックサウンドはメインストリームから影を潜め、ヒットチャートにはヒップホップやEDMがずらりと並び始めます。

ところが2010年代後半、メインストリームにおいて「エモ」が再び流行しました。

意外にも「エモ」に火を付けたのはヒップホップ。2010年代には「トラップ」と呼ばれるEDM寄りのトラックと独自のドラミングが特徴的なヒップホップの派生ジャンルが急速に流行します。

その中でも異彩を放っていたLil PeepやXXXTENTACIONは、1990年台初頭にムーブメントを起こした「グランジ」「オルタナティブ」を彷彿とさせるサウンドから「エモトラップ」と呼ばれる派生ジャンルを生み出しました。

実際にLil Peepは2000年代を代表するMy Chemical RomanceやPanic! at the Discoからの影響を公言しており、UnderoathやThree Days Graceといった「スクリーモ」「オルタナティブ」なバンドの楽曲をサンプリングしています。

Lil PeepやXXXTENTACIONは残念ながら若くして死を迎えてしまいましたが、現在ではJuice WRLDが彼らの意思を引き継ぎ「エモトラップ」を牽引しています。

簡潔にまとめるつもりが長々と書き綴ってしまった「エモ」の歴史ですが、次項からようやく本題です。

「エモい」の正しい使い方

「エモい」はふとした瞬間「エモ」にカテゴライズされるアーティストの楽曲が頭の中で流れた時に使う言葉。

おそらく「エモ」を聴いてきた多くのリスナーがこう思っているでしょう。

例えば作曲の過程でギターの新しいリフを生み出した時に、どことなく「エモ」ジャンルのサウンドを彷彿させると「今のリフ、エモくない?」みたいな使い方をします。

「エモい」は音楽的なバックグラウンドを持つ言葉なので、元ネタとなる音楽を聴いていないのに「エモい」という言葉を使うのは軽率…おっと失礼、勿体無いですよね。

ちなみに「エモい」という言葉が使われ始めた詳細な時期は不明ですが、筆者が初めて「エモい」という言葉を知ったのは、2000年代初頭の「エモ」がブームとなった頃です。

「エモ」に定義されるサウンドが曖昧であったり、バンドやアーティスト自身が「エモ」とカテゴライズされるのを嫌っている風潮にあるので、実際のところ「エモい」という言葉そのものを定義するのは難しいと思います。

とりあえず伝えたいことは、

意味もよく分からず「エモい」という言葉を使うくらいなら、まずは音楽ジャンルとしての「エモ」を聴きやがれコノヤロー!!

以上、Dopey(@shunpoko)でした。

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最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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