ゲーム開発者向けイベントのGDC 2019で、Googleが『STADIA(ステイディア)』と呼ばれるゲームストリーミングプラットフォームを発表しました。
『STADIA』の特徴を簡潔にまとめると、高価なゲーミングPCやコンシューマ機を所有していなくても、手持ちのPCやスマートフォンからGoogleのデータセンターへアクセスし、データセンター内のコンピュータでゲームを遠隔プレイすることが可能なサービスです。
クラウドもついにここまで来たか…とイノベーションに感銘を受けつつも、気になるのはその操作性やゲームをプレイする際の遅延、そしてサービス利用料。現段階の発表だと、2019年内に日本国内で『STADIA』を利用するのは難しそうですが、海外では『STADIA』を利用するゲーム配信者も増えてくると想定しています。
そして個人的に気になるのが、『STADIA』がeスポーツに与える影響です。
率直な意見を書くと、『STADIA』は”すぐさま”eスポーツに影響を与えることはないでしょう。理由についてまとめていきます。
『STADIA』のレスポンスはまだeスポーツのレベルに到達していない
実際に『STADIA』に触れた方がレイテンシー(遅延)について感想を述べています。
みんな気になるSTADIAのレイテンシーはこんな感じ。体感100ms以下な感じがする。
(これが本当にクラウドゲーミングだったらすごそう)#mercariGDC #GDC19 #STADIA pic.twitter.com/ig6OFqqns2— Nakaji Kohki / Lyrica-chan @GDC🇺🇸 (@nkjzm) 2019年3月20日
msはミリ秒なので、遅延は0.1秒未満ということになります。想像していたより遅延は少ないみたいですが、やはり体感できるレベルでの遅延は感じられますね。
eスポーツタイトルはフレーム単位での勝負になるので、2フレーム(32ms)以上の遅延はかなり不利になります。普段プレイしているゲームをアジア圏外のリージョンでプレイした時の遅延感覚と例えると、分かりやすいでしょう。
多くのeスポーツプレイヤーが勝利のために遅延の少ない高価なゲーミングモニターを購入している現状で、レスポンスの遅い『STADIA』を利用してeスポーツタイトルを勝ち抜こうと志す人は、まずいないと思います。というよりも、変なクセがつきそうなのでやめた方が無難でしょう。
公式データとしてのレスポンス速度はまだ分かりませんが、現状ではeスポーツタイトルに適したサービスではないと考えてよいと思います。しかし、今後のアップデート次第では化ける可能性も充分に考えられるでしょう。
ゲーミングPCを提供するBTOメーカーに大打撃?
『STADIA』の登場によって、一番苦しむであろうは現在ゲーミング PCを提供しているBTOメーカーでしょう。
『STADIA』のサービス提供によって、今まで欲しくても手が出せなかった高価なゲーミングPCと同等またはそれ以上のスペックを持ったコンピュータを、より安価に操作できるようになります。そうなれば、わざわざ数十万円単位の支出をしてまで、維持費や電気代がかさむゲーミングPCを所有する必要性についてを考え直す人もでてくるでしょう。
現状ではeスポーツタイトルに向いていないと思われる『STADIA』ですが、競技性がなくレスポンス速度を必要としないゲームタイトルをプレイするのであれば、わざわざゲーミングPCを購入せずとも『STADIA』で充分です。
正直なところ、『STADIA』の進化に伴い、ゲーミングPCの売り上げは減少していくだろうと思っています。
ゲーミングデバイスはどうなる?
併せて気になるのがゲーミングデバイスです。
今までは個人の所有するゲーミングPCやコンシューマ機に直で接続されたゲーミングデバイスを操作しゲームをプレイしていましたが、『STADIA』を介すことでゲーミングデバイスの最大パフォーマンスを引き出せるのかというのが、すこし疑問に思うところ。
それまで問題なく機能を発揮できていたゲーミングデバイスが『STADIA』を介することによって、 操作性が失われたり機能性が失われたりする可能性も十分にあるわけです。
そうなると、ゲーミングデバイスを提供するメーカーは新たに『STADIA』向けのゲーミングデバイスを開発する必要が出てきます。
最善なのは個人が所有しているゲーミングPCでも『STADIA』を介してでも、全く同じような操作性や機能性が保たれることですが、サービスが稼働していない現状では何とも言えないところではあります。
関連リンク
参考
速報:Googleのゲームサービス『STADIA』発表。YouTubeのゲーム動画から即プレイ開始(engadget)
ゲーミングモニター選びで重要な「入力遅延」を解説してみる(ちもろぐ)